2021年9月30日、Bリーグ2021年シーズンが開幕しました。新型コロナ感染拡大への懸念もありましたが、無事に開幕を迎え、現在も全国のアリーナで熱戦が繰り広げられています。B1は22クラブ、B2は14クラブがリーグを戦っていますが、特に注目を集めているのは、新たにB2からB1に昇格した茨城ロボッツ(以下、茨城)と群馬クレインサンダーズ(以下、群馬)ではないでしょうか。

共に北関東地域をホームタウンとし、強豪ぞろいの東地区所属となったことから、両クラブがシーズンをどのように戦い抜くのかとても楽しみなところです。偶然にも同時期に昇格となった両クラブですが、特徴的な共通点がいくつかあるのではないかと考えます。その共通点はBリーグクラブが持つビジネスポテンシャルを考えるうえで、重要なヒントを与えてくれるかもしれません。

今回は茨城、群馬の共通点から、クラブが地域に与えるプラスの効果やクラブとオーナーが生み出す相乗効果について考察してみたいと思います。

新オーナーの参画が転機となりクラブが成長

図表1は、過去5シーズン(2016-17~2020-21)の茨城、群馬およびB2平均の営業収入データです。 Bリーグ開幕年の2016年シーズンは茨城、群馬共にB2平均を下回っており、収入面で B2クラブの中でも下位となっていました。

出所:デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社

では、翌シーズン以降の両クラブの営業収入はどうなったでしょうか。茨城は2017年シーズンに対前年比+76%、群馬は2019年シーズンに対前年比+99%と大きく成長しています。

茨城では、2016年4~6月にかけて株式会社グロービス代表取締役が個人(以下、代表個人も含めグロービス )として株式の 50%を取得しクラブの経営に参画しました。当時の茨城は、120百万円の資本に対して累積赤字が116百万円超であったようです。

また、群馬では、2019年6月に株式会社オープンハウス(以下、オープンハウス )が株式の 69%を取得し、クラブの経営に参画しました。当時の群馬は3期連続で営業収入が減少している上、債務超過状態にもありました。

そんな苦しい経営状態にあった両クラブですが、いずれも新オーナーの参画から2年以内にクラブの営業収入を大幅に成長させ、 B2クラブの平均を上回る結果を残しました。これらの結果は、新オーナー参画がクラブのビジネスを成長させる転機になったためにもたらされた、と言って間違いないでしょう。

その後、群馬では2020年6月にオープンハウスが、茨城では2020年7月にグロービスがクラブ運営会社の株式を100%取得し、完全子会社化しました。経営状態が苦しいクラブが、新オーナーの参画をてこに短期間で競技成績・経営面で好成績を残し、 B1まで上り詰めたことは茨城、群馬の特徴的な共通点であるといえるでしょう。

Bクラブ経営への参画は地方創生を通じたオーナーのビジネスチャンス創出にもつながる

B2クラブを大きく成長させたオーナーたちですが、経営への参画 (=株式取得によるクラブへの投資 )にはどのような狙いがあるのでしょうか。まずは茨城のケースをみていきましょう。

グロービスが茨城の経営に参画したきっかけは、「水戸ど真ん中再生プロジェクト」にありました。水戸で地方創生のモデル作りに取り組むこのプロジェクトは、「アート×教育×観光×スポーツエンタメがある魅力ある都市空間の創出」や、県内外からの投資促進、人材育成促進による新たな産業の創出をテーマに掲げています。グロービスは茨城をそのプロジェクトの象徴的存在にするべく経営に参画したようです。

茨城への経営参画後、グロービスは茨城主体で水戸エリアの再開発を進めながらクラブの成長を支援してきました。その結果、収入面では前述の通り、ホームゲーム平均入場者数でもB2 トップ3に入るなど、地域への浸透を示す成果を上げることができました。

このようなクラブへの経営参画を通じた地方創生は、グロービスのビジネスチャンス拡大にもつながっていると推察されます。グロービスは2017年4月、「グロービス経営大学院特設キャンパス」を水戸市に開設しました。キャンパスは、地方における学びの場の提供、地方創生を担うリーダーの育成推進をコンセプトにしており、「水戸ど真ん中再生プロジェクト」の取り組みの1つに位置付けられています。

さらには、プロスポーツ選手のセカンドキャリア形成を目的としたグロービスでのMBA学費の奨学金制度の設立も行いました。当制度は、当初、茨城所属選手を対象として始めた支援を全プロスポーツ選手向けに拡大したものでした。グロービスは、プロスポーツを地方創生に活用することで地域産業発展や人材流入を促し、自社の教育機関で人材を育成し、その人材が地方創生に貢献する、といった青写真を描いていたのではないでしょうか。

グロービスによる茨城への経営参画は、水戸エリア、茨城、グロービスそれぞれにメリットの大きいケースであったといえるでしょう(図表2)。

出所:デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社

次に、群馬のケースをみていきましょう。群馬のオーナーであるオープンハウスは、日本が抱える様々な社会課題への解決策として「地域共創」を掲げています。特に地方で「まちへの投資・ひとの雇用・しごとの創出」という循環が弱まっていることへの課題意識があり、群馬県を中心に様々なプロジェクトを立ち上げています。

その取り組みの1つに群馬への経営参画がありました。経営参画後最初のシーズンで、早速売り上げは対前年比約2倍となり、その中でも入場料収入は2.7倍と大きく飛躍しました。

また、オープンハウスが群馬の経営と並行して主導した取り組みにアリーナ建設(OTA ARENA:仮称)があります。アリーナ建設の原資はオープンハウスによる企業版ふるさと納税を活用するスキームで調達されました。これは観光資源を増やし、定住人口や交流人口を増やしたい太田市も歓迎する取り組みでした。

遠方からの試合観戦者や、群馬目的での定住者の増加を願ってのことと推察されます。オープンハウスにとっても税金の使途を自社傘下クラブのホームアリーナ建設に特定できる有意義な取り組みとなったでしょう。

さらに、アリーナによって人の動態が変化し、地域が活性化することは、不動産業界に属するオープンハウスのビジネスチャンス拡大にもつながるでしょう。スポーツ・アリーナを軸に、「まちへの投資・ひとの雇用・しごとの創出・まちの活性化」という循環が起こり、人々が集まることでオープンハウスが手掛ける住宅が売れていく姿が想像されます。

太田市、群馬、オープンハウスが一体となったこのケースは、スポーツを活用した地域共創を実現する理想的な形とも考えられます。

以上より、スポーツを活用した「地方創生/地域共創」を掲げ、地域の活性化への貢献、クラブの成長、自社のビジネスチャンス拡大を一体で実現していることは茨城、群馬の共通点であるといえるでしょう。

茨城、群馬のケースから見えてくるスポンサーの在り方

茨城、群馬のケースにおける共通点は主に3つあると考えられます。

①北関東地域をホームタウンとするクラブであること
②新オーナーの参画を転機に短期間で競技成績・経営の両面で大きく成長したこと
③スポーツを活用した地方創生/地域共創を掲げ、地域活性化への貢献、クラブの成長、自社のビジネスチャンス拡大を一体で実現していること

人口減少、地方の産業衰退が懸念され課題となり得る地域において、バスケットボール、ひいてはスポーツが持つ価値を軸に地方創生を進めている好事例といえるのではないでしょうか。

地域、クラブ、オーナー企業の三者が相互にベネフィットを享受する関係性の創出は、スポンサーの理想的な在り方です。プロスポーツの商業的価値のみに対して投資を行うのではなく、プロスポーツが生み出す地域産業への波及効果や新たな市場の創出を見込んで投資する先進的な方法であることも間違いありません。

この方法はESG投資などがトレンドになっている中、企業活動としても歓迎されるアクションで、最近ではスポーツが生み出す二次・三次的な波及効果や社会的価値をSROIという指標で可視化し、投資判断を行うような動きも出てきています。

さらに、Bクラブへの投資特有の面にも注目すると良いのではないでしょうか。スタジアムのように天候に左右されず、臨場感を作りやすいアリーナへの投資を絡めることができる点は魅力的です。また、Bクラブ(特にB2)の大き過ぎないビジネスサイズも同様に魅力的でしょう。企業にとってリスクを抑えた投資ができる上、茨城、群馬の事例のように大きな伸びしろを持ち合わせている点が特長といえるでしょう。

今後のBリーグでは、2026年シーズンにクラブライセンス基準を大きく変えるリーグの構造改革が予定されており、新基準を満たすべく各クラブが経営面の強化を急ぐことが想定されることから、スポンサーの参入余地も広がる可能性があります。

Bクラブへの支援に関心がある企業や団体は、Bクラブのビジネスポテンシャルや先進的なスポンサーの在り方に魅力を感じ、クラブ関係者にはクラブが持つ価値を最大限生かした運営を目指してもらいたいと考えます。