今回で4回目を迎えたBリーグマネジメントカップ(以下、BMC)の2020年シーズン、B1は琉球が2位に14ポイントという大差を付けて初優勝を飾りました。琉球はマーケティング関連の指標がいずれも3位以内となったのをはじめ、全ての指標が上位10位以内に入っており、BM(ビジネスマネジメント)面の充実が際立つ結果となりました。

一方、FM面でも、Bリーグ開幕から全てのシーズンにおいてポストシーズン進出を果たすとともに(コロナ禍の影響で打ち切りとなった2019年シーズン除く)、2年目以降、4年連続で地区優勝を飾っており、Bリーグにおいて最もBMとFM(フィールドマネジメント)のバランスが備わったクラブの1つといえるでしょう。

創設以来クラブを率い、Bリーグ屈指の人気クラブを作り上げた木村達郎代表取締役社長(以下、木村社長)に、その背景にある経営方針や取り組みについて伺い、デロイト トーマツ グループの目線で分析しました。

活動理念の首尾一貫性

2007年に沖縄の地に誕生した琉球は、bjリーグ時代からBリーグ開幕後5シーズンが経過した現在に至るまで、毎年のようにポストシーズンに進出し、リーグ優勝争いに絡み、リーグ随一の熱狂的なファンの声援を受ける、Bリーグで最も人気と実力とを兼ね備えたクラブの1つとなっています。

沖縄市という地方都市をホームタウンとしながら、いかにして大都市のクラブにも全く引けを取らない、地域住民に愛される人気クラブを作り上げることができたのか、木村社長へのインタビューからその背景としてみえたのは、「沖縄をもっと元気に!」という活動理念をブレずに持ち続けるという一貫性でした。

クラブ創設時に、社会貢献・地域貢献というクラブの存在意義を分かりやすく表した「沖縄をもっと元気に!」という活動理念を掲げてから、現在に至るまで一字一句変えることなく、その具現化のために首尾一貫して取り組んできているとのことです。

木村社長によれば、クラブ創設からこれまで約15年間、繰り返し、繰り返し、畑を耕すようにスタッフや選手・指導者に、この活動理念を伝え続けてきた結果、在籍年数の長いスタッフや選手からほかのスタッフ・選手に伝えられる流れも生まれ、現在クラブ全体への浸透度は非常に高いと感じているとのことです。また、定性面だけでなく、日次でのチケットの売り上げ枚数や試合単位の売り上げといった数値面についても、積極的にクラブ内に共有しているそうです。その結果、活動理念が理念のままにとどまらず、選手の姿勢やプレーにもファンや地域のためにプレーしているということが体現され、チームのプレースタイル、文化が形成されるに至っているということです。

このように、ファンにクラブを応援してくださいという受け身の姿勢ではなく、自分たちがファンのためにプレーして、ファンを楽しませたいという気持ちを脈々と積み重ねてきた結果、現在の熱狂的なファンからの応援や、地域・パートナーからの支持を獲得するに至っているのでしょう。

また、このように選手・指導者にまで、理念が深く浸透していることが、毎年コンスタントに優勝争いに絡むというFM面での好成績にも良い影響を及ぼしているということが推察されます。

出所:デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社

創業経営者ならではの強み

このような経営の首尾一貫性を実行できているのは、木村社長が2007年のクラブ創設以来、経営を担い続けてきたことが見逃せないポイントであると我々は考えています。大きな責任企業を有する日本のプロスポーツクラブが抱える1つの課題として、責任企業側の人事異動の一環として経営者の交代が2~3年単位で行われるケースが多いため、経営が短期的視点に偏りやすい、ということが挙げられます。

その点、琉球では、木村社長が創業以来変わらぬ経営者として、同じことを一貫して伝え続けることができたからこそ、現在の高い理念の浸透度を実現することができているのだと考えられます。実際、木村社長も、集客を増やす、グッズを売るといった施策の前に、まず事業環境をしっかり整備する必要があるが、事業環境を2~3年の期間で変えていくことは難しく、現在の琉球があるのも設立当初から一貫して取り組み続けてきたことのたまものであるとコメントされています。

近視眼的に対症療法に追われてしまうと組織の伸びしろは限定されます。ブレークスルーを起こすためには劇的な事業環境の変化が必要であり、そのための中長期的視点での腰を据えた取り組みが必要であることが木村社長のコメントからもうかがえます。

そして、インタビューの中でも特に印象深かったのは「経営者の仕事は、事業のステージを変えていくこと」というコメントです。木村社長が常に意識されているミッションドリブンの経営ポリシーを端的に表しているもので、クラブミッションは変わらなくても、クラブや地域の成長に伴って経営のステージを変えていかなければクラブのサスティナビリティや地域の成長にはつながらないことを踏まえ、クラブ経営者は常に次の事業ステージを見越した経営判断をしなければならない、という重要な指摘といえます。

琉球は木村社長のこのブレないミッションドリブンの経営によりこれまで着実な成長を遂げており、また、今後も成長し続けるポテンシャルを持ち合わせたクラブであると感じさせられました。

アフターコロナと新アリーナ

2021年4月、話題の新アリーナ「沖縄アリーナ」がオープンしました。この影響もあり、2020年シーズンの琉球の売上高は、2026年に創設されるトップカテゴリーの資格要件とされる12億円の大台に到達しました。

琉球はこれまで地域の体育館を借りて興行を行ってきましたが、「観る人」向けの施設ではないことのほか、毎回会場の設営・撤去などでコストがかさむことやノウハウ・経験の積み上げの難しさといった課題を抱えていました。

アリーナ整備の必要性については、10年以上前から発信し続けてきたことであり、事業を次のステージに引き上げるために不可欠な要素であったと木村社長はコメントされています。新アリーナにより、バスケットの興行のみならず、ほかのエンターテインメントも含め地域の住民に楽しい時間が生み出されることで、地域が活性化され、クラブの活動理念である「沖縄をもっと元気に!」がより促進されていくことが期待されます。

一方で、沖縄アリーナの開場を目前に控えたタイミングで発生したコロナ禍によって、新アリーナでファンの熱気に包まれる満員のアリーナを実現することが当面難しい状況となりました。また、新アリーナの日本全国へのお披露目となるはずであった2021年シーズンオールスターゲームも延期となってしまいました。

この状況は、琉球にとって非常に残念なことであったと考えられますが、木村社長はアフターコロナの次の事業ステージを沖縄アリーナで築き上げていけることをポジティブにも捉えていました。コロナ禍により、足が遠のいてしまったファンに再びアリーナに足を運んでもらうためには、生観戦するに値する魅力をコロナ禍前以上に提供する必要があり、そのために沖縄アリーナで興行を開催できることは大きなインセンティブになるということです。

沖縄アリーナの開業前、約3,000人(BMCのアリーナキャパシティの計算ロジックでは約4,000人)規模の体育館をホームとしている際も、琉球は熱狂的なファンに支えられ、平均3,000人超の入場者数を集めてきました。

出所:デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社

今後、コロナ禍の不安から解放された社会において、沖縄アリーナを核としてどのような事業展開を見せてくれるのか大変興味深いです。「沖縄をもっと元気に!」の次なるステージに今後も注目したいと思います。